自動化は「選ぶ」ことから始まる
「電話受付をAIで自動化したい」。多くの企業が抱えるこの願いを現実のものにするために、最も重要な最初のステップは、「何を自動化するか」を適切に選ぶことです。すべての問い合わせをいきなりAIに任せるのは現実的ではなく、顧客体験を損なうリスクが高まります。本記事では、豊富な導入実績から見えてきた、自動化の効果が高く、かつ顧客も抵抗なく受け入れやすい7つの典型的な「用件」 を紹介します。これらを優先的に自動化することで、確実に効果を実感し、社内の理解と協力を得ながら、次のステップへと進むことができます。
まず分けるべき「自動化適性の高い」7つの用件
以下の用件は、情報が構造化されており、回答が定型的で、緊急度・感情的な関与が低いという共通点があります。
1. 営業時間・アクセス情報の問い合わせ
典型的な質問:「何時まで開いていますか?」「土曜日は営業していますか?」「店舗への行き方を教えてください。」
自動化設計のポイント:
シンプルなQ&A形式で構築。休業日や臨時営業の情報を容易に更新できる管理画面が必須。
「Googleマップで道順を音声でご案内しましょうか?」など、次のアクションへ誘導するオプションを追加すると親切。
2. 配送状況・納品日の確認
典型的な質問:「注文した商品が届かない」「いつ届きますか?」「配送会社と問い合わせ番号を教えて。」
自動化設計のポイント:
注文番号や電話番号による本人認証を会話フローに組み込み、個人情報保護に配慮。
配送システム(TMS)や顧客DBとリアルタイムで連携(MCP等を活用)し、最新の状況をその場で回答。これが最大の価値。
「遅延している場合は、こちらから折り返しご連絡しますか?」といったフォロー案内まで自動化可能。
3. 資料請求・カタログ送付の受け付け
典型的な質問:「パンフレットが欲しい」「ホワイトペーパーを送ってほしい。」
自動化設計のポイント:
名前、会社名、送付先住所、希望資料を会話の中で自然にヒアリング。
収集した情報は、直ちにメール送信システムやCRMに連携し、自動で処理フローがスタート。請求からフォローまでを一気通貫で自動化する好例。
オプトイン(マーケティング同意)の取得も、この機会に組み込める。
4. サービス・製品の基本的なFAQ
典型的な質問:「初期費用はいくらですか?」「対応エリアは?」「オプションには何がありますか?」
注意:複雑な比較検討や見積り依頼は、ここには含めない。あくまで公開情報レベル。
自動化設計のポイント:
自社WebサイトのFAQページを音声対応させるイメージ。回答文は明確で簡潔に。
「詳しい資料をご覧になりますか?」「専門の担当者がご説明しますが、お電話をつなぎましょうか?」と、自然に次のステップへの橋渡しができる設計が理想的。
5. パスワードリセット・アカウントロック解除
典型的な質問:「パスワードを忘れた」「ログインできない。」
自動化設計のポイント:
本人確認(生年月日、登録メールアドレスの一部など)を厳格に行った上で、音声ガイダンスに従ってDTMF(電話の押しボタン)で仮パスワードを入力させる、またはリセット用のURLをSMSで送信するフローを構築。
セキュリティ上、最も効果的かつ顧客体験が良い自動化の一つ。
6. 簡単な予約・キャンセルの「確認」
典型的な質問:「予約してある時間を確認したい」「キャンセルしたい。」
注意:複雑な日程調整を行う「新規予約」は、最初の段階では人間対応または別のチャネル(Web)に誘導する。
自動化設計のポイント:
予約システムと連携。名前や予約番号で照会し、内容を読み上げて確認。
キャンセル処理も、本人確認の上でシステム側で実行し、完了を通知。この処理が自動で完了することが大きな価値。
7. 採用に関する基本的な問い合わせ
典型的な質問:「募集はありますか?」「エントリーの方法は?」「選考状況を確認したい。」
自動化設計のポイント:
採用サイトの情報を音声化。現在募集中の職種をカテゴリー別に案内。
選考状況の照会は、本人確認後に応募者管理システム(ATS)と連携して回答。
人事担当者の負荷を大幅に軽減できる効果的な領域。
共通する成功のための設計思想
「人間につなぐ」エスカレーションを常に用意する:
「オペレーターとお話しになりますか?」「詳細は担当者から折り返しご連絡しますが、よろしいですか?」という選択肢を、会話の適切なタイミングで必ず提示。顧客に「閉じ込められている」感覚を与えない。
情報は「最新」かつ「正確」であること:
自動化の生命線は信頼。連携するシステムのデータが古いと、一気に信頼を失う。システム連携の確実性が前提。
会話は「短く、簡潔に、目的指向」:
だらだらと長い応答や、複雑なメニュー分岐は避ける。顧客が求める核心の情報に最短でたどり着ける設計を。
まとめ:小さな成功の積み重ねが、大きな変革への信頼を生む
上記7つの用件は、いわば「ロースティングフルーツ(低くぶら下がった果実)」です。これらを確実に自動化することで、
オペレーターの負荷が目に見えて軽減
顧客から「便利になった」という声
社内から「AIって使える」という評価
という好循環が生まれます。この成功体験が、より複雑な問い合わせの自動化や、全社的なデジタル変革への大きな一歩となるのです。
StepAIでは、お客様の通話ログ分析から、この「最初に自動化すべき7つ」に該当する問い合わせがどれだけあるかを定量的に評価し、最も効果の高いところから着手するためのコンサルティングを提供しています。確実な第一歩を共に踏み出しませんか。
自動化の旅は、最も熟した果実から摘み取ることから始まります。


